昨日は第1回ウェブ学会シンポジウム.
案内されていたプログラム構成の字面だけみると若干の不安感も漂い,どうしたものかと思ったものの,「行かずに後悔するより行って後悔(する方が良い)」の絢さん理論を久々に発動させて,行くことに.結果的には,これは行って正解.重要ではあるが下らないであろうこと必定の別件をサボって行った価値があった.いいもん見させてもらいました.関係者の皆様,本当にありがとうございました.
シンポジウム自体は,USTREAM録画とtwitterログのまとめが残っているので,残り香を味わいたい方は,こちらをどうぞ.
さて,以下,雑感.
プログラム構成は,当然100点満点とはいかないまでも,8割方は素晴らしい発表.明らかに問題だったのは若干1件くらいではないだろうか.あとは好き嫌いの範疇かと.まあ,(新しいものがないかわりに)現時点までの集大成的な話が多いので,ある意味,密度は担保されていたのかもしれないが.
発表者は,なるべく若く,現役でバリバリやっている人,という観点から選ばれていたように思えるが,その中で,Old Schoolを長尾真先生ひとりに代表させ,かつ,実はその長尾先生自身は,国立国会図書館長という新しい立場において現役として現場に立っているという二重構造を確保しているという… よくできている.
こういう場での東さんの存在は本当に価値がある.物事の見方や考え方や解釈の仕方を変えてあげることでその時代を生きる人の問題を解決するという哲学者の役割(←俺様定義 :)を,確実に果たしている.東さんの言葉により,対象となる議論が空想的だ衆愚だプライバシーだ(これはこれのとき)だといったところに落とされたまま這い上がれなくなるという事態から救われている.東さんの発言で個人的に響いたところは,以下の勝手抜粋と,東さん自身のtwitter再掲で.(哲学コンプレックスだからさw 後述)
Twitter / hiroki azuma: 英語で対応して言えば、ここでルソーははっきりと、十分 … (reblog)
Twitter / hiroki azuma: ぼくの一般意志2.0論のエッセンスはすべてこの一文に … (reblog)
Twitter / hiroki azuma: 懇親会で @eto さんあたりと話したときに言ったけ … (reblog)
一方の聴衆はといえば,Google日本語入力を先日公開しました,という工藤さんへの拍手に尽きる.いい会場じゃないか.いやマジで.
会場ではtwitterの発言も見ながら講演を聴いていたのだが,あの流量は無理だ.少なくとも,更新が1分に1回のツール(クライアント)では,どうにもならない.もう一段のブレイクスルーが必要か.あと,twitterを自分のメモ書きに使ってみようとも思って試みはしたが,これも破綻した(笑).
twitter発言の中で一番私の心を捉えたのは,豊田さんが検索エンジンスパム(SEO)用に作られたリンクファームの構造を可視化したものに対して言われた,この発言.
機能合理性を追求した結果が別の形で美しさを生むという意味では全く一緒.これは卓見だわ.その他多くの人は「菌みたい」とか言ってたが,まあ,それもある意味同じことではある.
個人的に,可視化というのは,どうも好きになれないというか素直に敬意を表せない(笑)研究分野なんだが,豊田さんのは例外的に,ぐっとくる.豊田さんが操作(インタフェース)の人でもあるということと,対象がWebであるということが当然あるのだろうが,他にも何か違うものがあるのだろうか.
そうそう,インタラクションとかユビキタスの研究分野(の研究者)って,アートコンプレックスとかデザインコンプレックスな人が結構いて,その人たちの存在がいろいろな形で研究に陰を落としていたりするんだけど,昨日,twitterのTL等を見ていて思ったのは,ああいう場になると,技術コンプレックスとか実装コンプレックスとか政治コンプレックスとか哲学コンプレックスとかビジネスコンプレックスとか,ほんと色んな人がいて,それらの人々が思わずその心境が滲み出るよう発言をしていたりして,非常に興味深い.
こういう時のtwitterのTLであるとか,あるいは自分がそれなりに分かっている分野のニュースを対象とした2chの(特に)ニュー速系のログとか見ていると,「訳の分かっていない」「素人が」「ピントのずれた議論」をしてるのが「目に余る」わけだが(笑),しかし実は,それらの人々こそが,「世間一般」であり,ビジネス云々を言うのであれば「お客様」であるし,あるいは「仕分ける側の人」である.であるならば,この乖離感を何かポジティブな方向に使う手立てはないのだろうか? とも思う.これは大きな課題.
一部で,結局何から起算して「ウェブができて約15年」なの? 問題も言われていたが,1st WWWとW3Cが出来てから15年なので,それでも良いのではないかと.:-)
以上,雑感おわり.
まとめると,仰ぎ見る空中戦の華麗さと,地上戦から生還した戦士が語る言葉の重み,その両方に触れた一日でした.改めて,関係者の皆様,おつかれさまでした.ありがとうございました.