(OTOTOY Weeklyの新譜紹介から2025年4・5・6月分を順次転載)
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4月第1週
Subway Daydream『100%』
これぞSubway Daydreamというグッドメロディ、明るく軽快なリズム、心躍るポップ。見え隠れするJUDY AND MARY的な切なさ。それらがタイトル通り100%詰まりきった10曲入りフルアルバム。
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4月第2週
Meg Bonus『New,man』
君島大空を擁するレーベル〈APOLLO SOUNDS〉から昨年10月にデビューEPをリリースしたMeg Bonusが、早くも1stアルバムをリリース。常人の数分の一しか重力を感じていないかのようなステップの高さ・大きさで軽やかにジャンルを跳躍する。圧倒的自由さ、ヴォーカルの吸引力、そして確たるポップがここに。
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4月第3週
笹川真生『STRANGE POP』
圧倒的色彩・美・ポップ。キラキラフワフワギシギシとした「こいつ」を手にしていると、ふと指先に掌に感じる硬い芯。それは私たちの日々のなにかあったりなんにもなかったりの時間に優しく寄り添う美しきメロディ。でも安心してると急にウワァッって思ったりする。これこそが普遍的なポピュラー・ミュージックだろう。アルバム最後の曲は “このほしにうまれて”。このアルバムが存在する時代にいられてよかった。
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4月第4週
Maika Loubté『Dream, Neo, Atmo』
日仏にルーツを持ち幼少期を日本で過ごしたシンガー・ソングライター/プロデューサーMaika Loubté (マイカ・ルブテ) が、90年代J-POPを自身の世界観で再構築したカバーEPをリリース。収録は “ロビンソン”、“強く儚い者たち”、“アジアの純真”。マイカが自分の心に深く刻まれて音楽的な遺伝子 (DNA) となってくれたと語る3曲。
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5月第1週
Moon In June『色彩を持たないで』
前作以上に多彩な音楽性に挑戦した2ndアルバム。「色彩を持たないで」とは、自分には自分の色があるはずだと思い悩むこと、あるいは、他者から色を付けられることへの葛藤をあらわすとのこと。ドリームポップ/ギターポップといえる表情のもと、「歌」を聴かせることを中心に据え、自由さと解放感にみちたアルバムとなった。聴き応え十分。AACしか配信できないのが本当にもったいない。
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5月第2週
aldo van eyck「cosmo bike / RCFH」
これまでのアヴァンギャルドさは残しつつも、どことなく親しみやすさを兼ね備えた2曲。持ち技の多様さで存分に楽しませてくれる。来月リリースのアルバムがますます楽しみに!
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5月第3週
ayutthaya『epoch』
ayutthayaの4th EP。前作アルバムから2年半ぶりのリリース。コンセプトは宇宙への旅立ちと同化。起伏のある5曲が、どこをとってもayutthayaらしくありながら、それぞれ異なる魅力を持つ。ワンマンを控え、“epoch” のアウトロがライヴではどう表現されるのかも楽しみ。OTOTOYでは購入者プレゼント企画を実施中です!
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5月第3週
超右腕『I WAS WAITING FOR YOU AT OKAYAMA-STATION』
岡山の4人組、超右腕 (スーパーウワン) の3rd AL。ちょっと良すぎる。大 傑 作。ロックの良さ、“オルタナ” の良さが詰まっている。最高にカッコいいバンドワーク、ここにしかないヴォーカルと歌詞の取り合わせ。聴いていて頬が緩む1曲めのコーラスワークから、走馬灯のようなラスト曲のアウトロまで、そして喪失感。聴き応え抜群。
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5月第4週
SAGOSAID『itsumademo shinu noha kowai?』
前作リリパ (2023年夏) の頃からのライヴの勢い、完成度の高さ、志をそのまま詰め込んだ全6曲。ギターってやっぱりいいよなという感情を湧き起こすソリッドなギターサウンド。この手のサウンドにありがちな「気だるげ」のニュアンスは残しつつ確実に正面を向き一歩も二歩も踏み寄ってくるヴォーカル。真っ向勝負とはまさにこれ。AACしか配信できないのがほんとうに残念。
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5月第5週
長瀬有花『Mofu Mohu』
どこがどうとは指摘できない奇妙さと、心地よさすら感じる親しみやすさとが共存する、良質な歌と音楽たち。「バーチャル・アーティスト」とも称される長瀬有花のアルバムだが、スタジオでバンド録音合宿を行い実際に空気中を伝播していた生音のみが収録されている (打ち込みの音もすべてスピーカーを通してリマイクしている) とのこと。さまざまな両面性から実装された心地よさと美しさを堪能してほしい。
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6月第1週
HEP BURN『浮遊』
「オルタナティブシティロックバンド」を名乗る広島発、Gt.Vo./Ba./Dr./Key./DJ.構成5人組の1stミニアルバム。よく言ったもので、リズム、ビート、ピアノ等々さまざま要素が奔放に折り重なりながらも、特有の浮遊感や寂寥感がそこはかとなく漂い続けているさまは、まさに“オルタナティヴ”דシティロック”。ライヴみてみたいです。
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6月第2週
muque『DOPE!』
音楽的多様性の肯定、それを軽やかな足取りで進んでいくさま、そんないまの日本のシーンを体現するようなmuqueの新作。彼らが幅広い支持を集めていく様子を見ていると、本当に嬉しくなるし、希望を感じる。
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6月第3週
iVy『混乱するアパタイト』
Vo/GtのfukiとVo/Keyのpupu、2人組オルタナティブポップユニットiVyの1stフルアルバム。脆く儚そうな空気感・非現実感と、実は骨太なポップミュージックが同居している。耳の気持ち良さのみならず、不思議と胸の奥底から感想が湧き上がってくる作品。聴き込みたい。8月の初ワンマン公演はフルバンドセット含む3部構成とのこと。ユニット編成とフルバンドと、あとなに?
6月第3週
aldo van eyck『das Ding』
福岡を拠点に活動する4人組オルタナティブロックバンドaldo van eyckの3作目となるフルアルバム。全20曲、計71分。ボリュームと同時に曲調の幅広さに驚かされる。先行でリリースされた3枚の2曲入りシングルでは作品ごとにキャラクターが揃えられていたが、アルバムではポストパンクからオルタナ、ジャズまで、やりたいことが混然と詰め込まれている。が、果たしてこのアルバムは濁っているのか、それとも澄み切っているのか。
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6月第4週
Hammer Head Shark『27℃』
バンド結成の2018年以降、数枚のEP/ミニアルバムをリリースしているが、2022年にバンドメンバーが変わり今の確固たるスタイルとクオリティを確立してから初となる大部の作品であり、1stフルアルバムである。このアルバムに対して作り手も聴き手も「祈り」という言葉を使っている。この音楽を必要とする人たちとその外側に届いてほしいという願い、これまでとこれからへの感謝が込められていることに違いはないだろう。だが、誰もが抱える軋みを言葉にし、ながいひゆの強く優しい歌と、多彩で芯のあるバンドアンサンブルでそれが奏でられるこの作品は、誰かに頼らず、バンドとリスナーがともに安息を作り上げる行為でもある。機会があればぜひライブをみてほしい。もっと強くて優しいから。