2025年の記事一覧

〈OTOTOY 2024 スタッフズ・チョイス〉から転載

(「OTOTOY各スタッフがそれぞれ選んだ2024年の10作品」からの転載です)

■2024年の10作品◾️

  1. sidenerds「潜水」
  2. sidenerds『toumei na sekitan』
  3. 柴田聡子『Your Favorite Things』
  4. ANORAK!『Self-actualization and the ignorance and hesitation towards it』
  5. 雪国『pothos』
  6. しろつめ備忘録『リマインダー』
  7. downt『Underlight & Aftertime』
  8. SACOYANS『SUN』
  9. FUJI『欠伸をした神様』
  10. The Cure『Songs Of A Lost World』

■チャートに関するコメント■

何度も同じことを言っていますが、2024年はsidenerdsの年でした。混沌とした多要素の淵から沸き立つ唯一無二さ。そしてライヴが輪をかけて素晴らしい。それらを讃える特別な気持ちと、2枚でアルバム級という想いを込めて、1stシングルと1st EPの2枚をチャートイン。続いて柴田聡子とAnorak!、昨年のスペシャルなアルバムといえばこの2枚でしょう。どちらも新境地×強度の絶対値が圧倒的でした。しろつめ備忘録と雪国はマイ・チャートのニューカマーです。洋楽も1枚。DIIV、Clairoと迷いましたが、The Cureの16年ぶりのアルバムを。このアルバムにあるのは終末ではなく時間の重みだと思います。ロック・ミュージックとともに長い時を過ごした自覚があるひとは一度聴くべし。今年もたくさんの素敵な音楽をありがとうございました。

■ベストライヴ(DJプレイ、その他、配信も含む)■

カネコアヤノ「Livehouse Tour 2024」6月4日 @Zepp DiverCity
すごかったやつ。圧巻、強すぎる、完敗。デカいライヴのラスト曲みたいなクライマックスが20分ごとに来ては抑えてを繰り返す波動。あんな構成のライヴは初めて観たかも。もうひとつ挙げるとしたら、Fairground Attraction「Beautiful Happening」6月27日 @SHIBUYA CLUB QUATTRO、を。ステージ上もフロアの老若たちもよくぞここに辿り着いたな、と。これまでに感謝し、これからも良い音楽とともに暮らしていこうと、あらためて思いました。

■音楽作品以外のベスト一作(書籍・映像作品など)■

〈LOTUS PALACE〉のベトナム料理
ベトナム料理は美味しい。口に合う。普段の〈PHO THIN TOKYO〉のフォー (限定の生麺がオススメです) も良いが、たまに食べる洗練系ベトナム料理はとても美味しい。……という安穏とした文から唐突に不穏当な発言をしますが…… 一般論として洗練された料理の成立は、現代の民間の研鑽もさることながら、かつての “政治権力” から切り離すことができません。ましてや、ベトナム料理において言われる “フランス文化の影響” とは植民地支配の結果以外のなにものでもない。旨い旨いと言っていていいのか、という気持ちが頭をよぎる。が、美味しいものは美味しい。人間は悲しいものです。きっと音楽でもなんでも「好きなものは好き」で済ませていることがたくさんあるんだろうな。

■2025年にむけて■

2025年ってヤバくないですか。25年ですよ。100年の四分の一。あのミレニアム騒ぎからクオーター経過っすよ。ヤバくないすか。

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2024年の10作品のSpotifyプレイリストも公開中。

ロックだとかポップだとか

(OTOTOY EDITOR’S CHOICE Vol. 307「ロックだとかポップだとか」からの転載です)

年末年始から〈rockin’on sonic〉で浮かれたまま日々が過ぎ、今日が金曜日なのを忘れていて進行管理をミスりました。というわけで急遽更新、2週連続登場です。すみません(笑)。

先週のこのコーナーは「リリースもライヴも良かったアーティスト」で、そして恐らく来週公開される毎年恒例の『スタッフズ・チョイス』の10作品はアルバム/EPベースで選びましたので、今日はそこから漏れた、でも大好きな曲たちを。

ざっと並べて聴いてみたのですが、なんか歪んだギターばっかりですね。趣味丸出し(笑)。

結局のところ私が好きなのは、「良い歌メロをその人ならではの声で歌う」と「歪んだギターとキラキラしたギターからくる感傷でロックだとかポップだとかどうでもよくなる」なんですね。

今年もそんな曲たちにたくさん出会いたいです。

あらためまして、今年もよろしくお願いいたします。

(プレイリストのSpotify版はこちらです)

2024年リリースもライヴも良かったアーティスト

(OTOTOY EDITOR’S CHOICE Vol. 306「2024年リリースもライヴも良かったアーティスト」からの転載です)

あけましておめでとうございます。
昨年は大変お世話になりました。ありがとうございました。

年明け担当となりました。2024年、音源も良かったけどライヴに行ったらそれ以上に良かったアーティストたち、でいきましょう。

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2024年はsidenerdsに尽きます。本当は1st シングルの3曲・1st EPの5曲すべてをプレイリストに入れたいくらいですが、そういうわけにもいかず。でも敬意を評して特別に2曲を。もう、音源もライヴもあんなにカッコいいとはなにごとかっていう。例えばプレイリスト1曲目の “入水”、音源を先に聴いたひとは、ライヴでは、あのボーカルは、あのサビのVo.とバッキングのグルーヴは、あのサビ後のツイン・リードギターは、あのアウトロの轟爆音は、どうなるんだろう? って思うじゃないですか。ライブでは…… そのままどころじゃない、マシマシです。気持ち良さに直結する4つの楽器と2つの声のアンサンブル、素晴らしいが過ぎます。“入水” は文句なく今年のマイ・ベスト。

2024年といえばHammer Head Sharkも欠かせません。ライヴが良いのは以前からですが、今年はさらに一段高みに。ながいひゆの切迫感と血の通う温かさが綯い交ぜとなった心を鷲掴みにされるヴォーカル、ときに歌い・ときに叫び・ときに囁く藤本栄太のリードギター、メロディアスで (ながいが評するように) 筆で描いたような心地よい足跡をかたちづくる後藤旭のベース、バンドのダイナミズムとグルーヴを体現する福間晴彦のドラム、すべてが格別です。そしてもうひとつ心に残るのが、2024年は明確にそこに、優しさや温かさや愛が表現されるようになったことです。昨年はインタヴューとライヴ・レポートをやりました。今年も活動が楽しみです。

2024年、待望の1stアルバムをリリースした、しろつめ備忘録。彼女たちのライヴも観るたびどんどん良くなりました。Gt./Vo.のおはらはなの歌とギターの際立ちたるや。おはらはなは以前のソロ活動のときから観ていたのですが、こんな格好良いバンド活動をしてくれるとは嬉しい驚きでした。okgのギターが抜群に良い、ていうか個人的に好き過ぎる。スネアの音が気持ち良いドラムも、歌とギターが沸騰する時は安心をもたらし歌とギターが平穏な時は内なる沸々たる熱を表現するベースも素晴らしい。今年はもっと良いライヴを観せてくれることでしょう。

11月に3rdアルバムをリリースしたSACOYANS。東京でのライヴは貴重なのですが、それでも段々と変化していくのが感じとれました。これはどういうことなのかと思っていたら、3rdアルバムが、まるで答え合わせのように。めちゃくちゃうるさくて、ぜんぜんうるさくない。すごく歪んでいるのに、すごくクリア。キラキラの絶妙な半歩手前に留まりながら重層的な綺羅びやさが際立つギター・ワーク。そして圧巻のコーラス・ワーク。2月の東京でのリリパが楽しみです。その前に、ちょうどこの記事公開の翌週の金曜日、Zepp FukuokaでGinger RootのO.A.です。やっちまってください!

ponderosa may bloom、とにかく曲が良い、歌唱パフォーマンスも良い、そしてライヴが良いです。大仰な言いかたをすると、ロック/ポップ/アイドル歌謡、三者の対立と闘争を調和と神性へと導く新たな提案。一見アイドルの体をしていて、もちろんちゃんとアイドルなんですけど、同時に正体不明のナニモノかが生まれつつあります。ライヴでの “遊色効果” 大サビ・落ちサビの御妃桜夕→桜庭莉々華のリレーは2024年の東京で聴くべきもの十指に入るのでは、とさえ思います。昨年はデビュー・ライヴのレポートを書きました。

11月のワンマン・ライヴのフル動画が公式で上がっていますので、興味があればぜひ。

Beachside talks、昨年リリースされたシングル4曲、どれもがクオリティが高く、それぞれに異なる色合いを持ち、とても印象的でした。そしてライヴも音源以上の良さがありました。ライヴでの引き算(?)の音作りが巧みで、とても心地よい。今年はたくさんライヴがみたいです。

Hoach5000はそもそも2月リリースの2nd EPが最高。どの曲も頭数秒、音が出た瞬間に胸がキュッとする。そのうえで前を見て力強く歩いている感が沁みます。ライヴもまさにその通りなのですが、どうやら私が観ていない9月のライヴがとても良かったらしい。うう…… 今年は欠かさず観たいです。

HOMEも音源以上にライヴが魅力的なグループ。広い音楽地図の上に適当な◯を書いて「ここら辺」とか言うのは、ありがちで陳腐な行為ですが、HOMEは3人がてんでバラバラの3点に杭を打ち、そこから脚を長く伸ばした3脚の上に彼らの音楽があります。「4隅を抑える」とかではないので、不安定で歪で総花ではなく選択的で、でも断然と意志がある。カッコいいライヴを観せてくれました。

そして最後に、2024年といえば欠かせないのがAnorak!のアルバムでした。チャレンジの志とその到達点の高さ。7月のワンマン・ライヴでは二部構成形式で1stと2ndの曲を分けてやっていましたが、アジア・ツアー、北米ツアーを経た後の12月のライヴでは、旧新の曲を混ぜた流れの組み立てが相当こなれていて、未知の領域を成立させつつありました。あれはすごい。昨年はインタヴューを行いました。

REIMEI SESSIONのライヴ動画がありますので、ぜひご覧ください。

昨年一年間、もちろんここに載っていない方々も含めて、たくさんの素敵なライヴを観せていただいて、本当にありがとうございました。

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今年もOTOTOYをよろしくお願いいたします。

(プレイリストのSpotify版はこちらです)