(OTOTOY EDITOR’S CHOICE Vol.231「夏です」からの転載です)

暑いわ!ってことで夏の曲プレイリストです。

それにしても暑すぎませんか? 夏の曲を選んだのですが、現実のほうが暑すぎて歌詞世界とのズレが生じています。暑すぎて蝉も鳴かないし虫も飛ばず羽音も聞こえません。東京は夕立さえ降りません。この暑さのなかクーラーのない部屋で過ごすのは命にもかかわり、だいぶ現実味がなくなってきました。現実が歌詞に近づいているのが、1曲目に入れたXTCの “Summer’s Cauldron” ですね。cauldronは「大釜」。魔女が何かをぐつぐつ煮込むときに使うアレ。鍋で煮込まれているような暑さ、まさにそれだ。(煮込まれたことないので想像ですが)

夏の歌詞世界といえば、とにかく恋愛。なんでなんでしょう?「開放的な気分」ってよく考えるとなんのことやら意味わからない。なにかしらの意味で自分にとって大切なひとがいるのは良いことでしょう。でも夏だけじゃなくて春秋冬もいたほうがいいと思います。

もうひとつ夏といえば、夏休みやvacation。そこでは楽しさ・良き思い出が表現されると思われがちですが、洋楽では「孤独」と結び付けられる例も多く見られます。夏がはじまるまで一緒に過ごしてきた同級生、同僚、友人らが居なくなり、ひとりになったときの内省。欧米では夏=学年の終わりなので、日本の「3月」に相当する心情もあるのかもしれません。

そして日本の夏の歌、その一大勢力は「夏が終わる切なさ」です。長い夏休みが終わる、プールが終わる、学校がはじまる、宿題がまだ!と、子どものころに感じた寂しさ・切なさ・悲しさが染み付いているのでしょうか。特別長い休みがあるわけでもない大人も、なんか切なくなりますよね。私のなかには「“夏休みはもう終わり” ソング」という括りが確実にあるのですが、なんと今はまだ7月。夏の終りソングは控えめにしました。入れられるものなら入れたい “さよなら夏の日” や “DOLPHIN SONG / ドルフィン・ソング” は配信がないし……

フジロックが終わり週が明けたら7月も終わります。夏はこれからが本番。暑さをしのぎ、切なさ控えめ楽しさ多めで過ごしましょう。目も眩む日差しですが、太平洋高気圧に覆われたこのところずっと、空の青が綺麗です。みなさま、お体ご自愛ください。

P.S.
今となってはこういうリストをつくるとき(リバイバルも含めて)「シティ・ポップ」をどう扱うかが面倒このうえないのですが、今回は1曲しれっとブレッド&バターを混ぜてみました。聴いていて違和感のなさがすごい。編曲・細野晴臣。リリースは1979年。おそるべし。

(プレイリストのSpotify版はこちらです)