こんなグラフを見かけたので前から思っていることなど.

Global Music Industry Turnover (1973-2009)

これを見ると「単にCDがバブルだっただけじゃねーのか」という気がしないでもないが,右肩上がりを信じていた人々は,ピークのところ(1999年?)で何かが起きた,と信じたいのだろう.

Napsterが生まれたのが1999年,iTunes/iPodが出たのが2001年.まあ,関係なくは無い.

個人的状況を考えると,CDをあまり買わなくなった一番大きな理由は,iTunes/iPodにより,既に所有している音源を聴くので「手一杯になった」からだ.これはもう如何ともし難い.歳をとって新しいものへの欲求が減ったというのもまた事実で,自らのライブラリへの傾倒の容易さが更にそれに輪を掛ける.

iTunes/iPodには所有ライブラリが丸ごと入るため,そこでは全ての曲/アーティストが参加する壮大なリーグ戦となる.聴取機会を巡り,個人的「いい曲」の地位を巡り,現在の新譜や新人が数十年間の蓄積となる曲やアーティストと闘わなければならない.

戦う相手がビートルズやストーンズといったオーソドックスである,というのは,実はまだマシな話だ.それは真っ当な実力勝負とも言える(まあキツイ話だが).タチが悪いのは,iPodの持ち主の個人的な思い入れや思い出との闘いだ.そこでは,メジャー/マイナーはおろか,楽曲の良し悪しすら関係なかったりする.勝ち目の薄い,厳しい戦い.

全く同じことが,これから「文芸」においても発生するのだろう.(電子書籍云々がうまく立ち上がればの話だが) そして,その先,他のジャンルでもまた.

これからの作家や表現者は,古典と戦い,受け手の記憶と闘わなければならない.一見フラットな戦場も,微視的には記憶とか郷愁とか憧憬とかそんな厄介なもので満ちている.

ただひとつ言えることは,音楽の場合,その厳しい闘いを勝ち残るアーティストや曲が,今でも生まれ続けていることだ.それはとても素敵なことであり,それらをもたらしてくれるアーティスト達に心から,ありがとうと,貴方達のおかげでまたちょっと生きていくのもいいなと思うんだ,と言いたい.

希望はまだある.

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