(OTOTOY Weeklyの新譜紹介から7・8・9月分を転載)

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7月第5週

高井息吹『金星の声』

その人からふつふつと音楽が湧き出る、もっと言えばその人が音楽そのものであるような、そんなアーティストたちがいる。私の好きなアーティストでその代表格が高井息吹だ。歌とピアノによる昨年のEP『PIANO』、君島大空や新井和輝らと作り上げた2020年の『kaléidoscope』と、制作体制によりその都度表情が変わる彼女の作品だが、今作はアコースティックなバックとアンビエントな電子音の融合に包まれた作品となった。しかし高井息吹の歌の強さは変わらない。

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8月第1週

HOME「Tell Me」

沖縄在住の3人組、HOMEのニュー・シングル。歌詞は日本語、英語、韓国語の3ヶ国語が溶けるように混ざりあい、曲調も2024年のインディーポップとはこれだとばかりに他領域との境界を曖昧に冒していく。HOMEの大きな魅力のひとつがメンバー3人の「バラバラさ」だと思うのだが、その強みが存分に生かされた1曲。カップリングは既発曲、言わずもがなの名曲 “Plastic Romance”。

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8月第2週

Shiki『Island』

熊本在住、女性ヴォーカル・ドラムレス・バンドShikiが約3年ぶりにリリースした3rdアルバム。前作2021年の以降のアクティビティが余すことなく記録された、Shikiの特徴のひとつでもある幅広さと、存在感を示し続けるAkariのヴォーカルが魅力的な作品。気になったかたは2020年のShikiへのインヴュー記事もぜひ。

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8月第3週

超右腕「インユーテロ (Live at 渋谷Spotify O-nest 2024.2.11)」

岡山在住の4人組バンド、超右腕(スーパーウワンと読む)。今年2月に渋谷O-nestで行われたライヴの音源を5月から毎月配信中。こちらはその第4段。通常音源でも存分にキャッチーとエモーショナルと胸キュンが共存する彼女たちの楽曲だが、ライヴになるとその数倍感情が掻き立てられる。最高!

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9月第1週

MoritaSaki in the pool「MIRROR’S EDGE」

1stフル・アルバムのリリースを18日に控えたMoritaSaki in the poolがアルバムから先行配信。切なくて甘いシューゲイズ・ポップ。浮遊するツイン・ヴォーカルが唄う良メロと耳に残るギターのフレーズが後を引く。アルバムが楽しみです。

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9月第2週

Heavenstamp『Make Lemonade』

インディー・ロック・デュオ、Heavenstampの3年ぶり5枚めとなるフルアルバム。コロナ禍以降、ユニットの体制変更以降のリリース・シングル曲もすべて収録され、最新のHeavenstampを存分に味わえる、要素の幅広さとそこに貫かれるポップに充ちたアルバム。

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9月第3週

FUJI『欠伸をした神様』

「J-POPのアップデート」を掲げるソロ・プロジェクト、FUJIの最新AL。デビュー時から一貫して変わらない志の高さとポップの肯定。必要とあらば友人ミュージシャンの手も借り妥協を排して制作された今作は、圧倒的な強度と美しさと唯一さに結実した。傑作。

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9月第4週

TANUKICHAN『Circles』

US・オークランドのSSW、ハンナ・ヴァン・ルーンによるプロジェクト、TANUKICHAN (タヌキチャン)。前作までプロデュースを手掛けたトロ・イ・モワことチャズ・ベアーから離れ、Carpark RecordsからEPをリリース。US・サンフランシスコ出身の新星シューゲイズ、Wispをゲストに迎えた “It Gets Easier” も話題に。ドリーミー、シューゲイズ、グランジ等々、過去を呑み込み消化した現在進行系のオルタナティヴ。日本国内リリースでは “NPC” も追加収録されています。