(「OTOTOY各スタッフがそれぞれ選んだ2023年の10作品」からの転載です)
■2023年の10作品◾️
- SAGOSAID『Tough Love Therapy』
- Slow Pulp『Yard』
- boygenius『the record』
- ひとひら『つくる』
- daisansei『彼は紫陽花の行方』
- 君島大空『映帶する煙』
- 笹川真生『サニーサイドへようこそ』
- 100 gecs『10,000 gecs』
- colormal『diode』
- 家主『石のような自由』
■チャートに関するコメント■
今年もアルバム縛りで選びました。この数年の、ベッドルーム、バンド、フォーク、クラブ、…… といったいろいろな波長が合わさり心地よいうねりが生じた年だったと思います。2024年はもっと大きなうねりがくるでしょう。うねりに振り回されたい、それを楽しみたいです。候補外のEPで印象に残る作品は、HOME『HOME EP』、NaNoMoRaL『KonoYono』、つきみ『♡きえたくなる度君、刻む♡』など。シングルで1枚挙げるならば、downt「III」でしょうか。
■ベストライヴ(配信含む)■
リーガルリリー「YAON 2023」7月2日@日比谷野外大音楽堂
みんな知ってるリーガルリリー。観たことあるよというひとも、“リッケンバッカー” 知ってるよというひとも、たくさんいるでしょう。でも、今こそ観てほしいです。圧倒的に強くて新しい、真正面のロックに最新のテクスチャー。12月のZepp Shinjukuのライヴはさらに進化していたのですが、ベストは、やはり野音のほうで。心地よい風、変わりゆく空の色、最上の音楽。野音の魔法は変わらずでした。
■音楽作品以外のベスト一作(書籍・映像作品など)■
björk「cornucopia」3月28日@東京ガーデンシアター
ちょっと反則だけど、björkの「cornucopia」をここに。建付け上はコンサートですが、実態は音楽・映像・照明・衣装・舞台美術・メッセージ・エンタテインメント等々すべてが詰め込まれた舞台芸術/総合芸術であり、体験でした。発せられる音と光景の隅から隅までが心を叩く、逸脱を恐れず、観るものに訴えかける「なにか」を構築するビジョンと凄腕。恐るべし。
ちなみに私のこの欄、2020年「Zoom」、2021年「mRNAワクチン」ときて、2022年を「Generative AI」としたのですが、一年早まったかなと思うような「生成AI」一色の2023年でしたね。音楽もメディアも、そしておそらく2024年はライヴを含めた体験・エンタテインメントも、他人事ではなくなるでしょう。
■ベスト・プレイス■
一蘭 渋谷スペイン坂店
入ったことないですが、店の前を通り過ぎるたびに、1時間以上待ちとかの看板を見ては「すげえな」と思っています (下北沢店はよく行きます!)。去年は「訪問先としての日本」に興味津々な年でした。いわゆるインバウンド。オフィスがある渋谷はもうわけがわからんし、春先にちょこっと遊びに行った箱根は、観光地 (大涌谷とか) にせよ泊まった宿にせよ、驚くようなインバウンド率でした。下北沢あたりのライヴハウスも「来てみた」ひとが日に日に増えています。「テクノロジーが旅をなめらかにする」とは、あるひとの文章にあった言葉ですが、ひとつの興味は、日本はどれくらいなめらかなんだろうか? (世界と比して) ということ。これは主に制度とテクノロジーの話です。そしてもうひとつの興味は、日本に暮らす日本人の幸せについて。これは硬直性と周縁性の話なのでしょう (たぶん)。
■2024年の抱負など■
去年の5月8日を境にした暮らしの変化が、個人的には印象的です。人間もウイルスもその日をもって変わるわけでもないのに。結局は「決めごと」なんだな、と、しみじみ思いました。すべからく「結局は決めごと」である以上、それを尊重し大切にすること、と同時に、そこから外れることを怖れずそして許すこと。そういったことを心に留めながら2024年は暮らしていこうと思います。またなにが起こるか分からないからね! というのは新年早々に思い知らされました。
OTOTOYについては、昨年のOTOTOYは、ちょっといい感じになりつつある年でした。皆さまのおかげです。ありがとうございます。そして今年のOTOTOYは、尖った姿を見せたいと思っています。尖頭とは、孤立や少数派ではなく、ずっしりとした質量の裾野を持つ峰々だと思います。そうなるためには、ますます多くの皆さまのお力添えが必要になります。よろしくお願いいたします。
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2023年の10作品のSpotifyプレイリストも公開中。考えるのにも使ったプレイリストなので候補とかもそのまま入っています。