2016年02月の記事一覧

"The Next Big Thing in Design"

IDEO—博報堂傘下に,のニュース(「グローバルに展開するデザイン/イノベーション会社IDEO社、博報堂DYグループの戦略事業組織「kyu」の一員に | 博報堂 HAKUHODO Inc.」)は,ニュース自体もそうだけど,ニュースに驚いている/動揺している方々をみて,ああこういう層の人たちがIDEOを見ているんだー,と観察するのも面白かった.

会社を売るからには大人の事情やらお金の事情やら何の事情やら色々とあるのだろうけど,そんなことはおくびにも出さず,どこまで本気でどこまで言い訳やらハッタリやら分からない檄文をTim Brown (CEO)が発表してしまい,さらに動揺が拡がる,みたいな.これです.

曰く,

  • 生まれてから30年が経過した俺らの組織は,もう今のハイペースな技術の進歩についていけない
  • 我々が創りだしたやり方は,もうピークは過ぎたし,そこら中にあふれている(コモディティ化した)
  • より大きな,社会的な問題に取り組む必要があり,それに新しい環境や体制が必要だ
  • ラボで回せるような規模での「観察・プロトタイピング・テスト」は他人に任せて,これから俺らは,どデカい対象をどデカい体制で“(interaction) design”するんだぜ,ヒャッホー(←こんなことは書いてありません :-)

「卒業」するにあたり,より大きな・社会的な課題を掲げる,というのはありがちなパタンなので100%真に受けてもいけないのだろうが,それにしても刺激的な‥‥

ところで.

今この現在,どデカい問題にどデカい体制で取り組んでいる人々がいないのかというと全くそんなことはなく,政府とかデカい企業とかが連綿とそれを続けてきた訳だ.彼らの言い分とか発奮とかもまた聞いてみたいものであるが,そういう人達の言葉はほとんど激文化しないのでちょっと残念.言い分はある筈なのだけどなあ.

文中では

analytical cultures traditionally start with an answer, and then break the problem down into its constituent parts

creative cultures start with questions and look at problems holistically

という対比が出てくる.結果として同じ「区分け」になる気もするけど,視点は違いますね.

あと微妙に引っかかったのが,

Organizations and systems must be redrawn so that they are able to make use of today’s technological capacity in ways that help humans, not hurt them. The sci-fi specter of A.I. that outsmarts us or an Internet of Things that controls us can only come true if human-centered design is not present at the drafting table.

というくだり.

ともあれ,この檄文を読めて大変に良かったです.

(誰か日本語に訳せばいいのに)

P.S.
こちらのポストも参考にさせていただきました.(なぜこれ↓はembedded postにならないんだろう??)

IDEOが、博報堂グループのKyu Collecticveの資本参加を受けるというニュースが飛び込んできました。ティム・ブラウンCEOが、その意図を説明しています。…

Posted by Atomos Design on 2016年2月9日

————

恒例?のtumblrコーナー(これは自分のためのメモ用に便利だということに気付いたw)

馬鹿だと思うが,決して馬鹿にしない

これ全篇「名言」だらけである(笑)

第2回 イノベーションはハッタリから生まれるのだ|エステー会長 鈴木喬|ダイヤモンド・オンライン

最初にリンクだけfacebookに貼ったのだけど,惹かれる人が多いようで反応が良かった.

内容をひどいと感じる人もいるだろう.が,言ってることは,まあ「正しい」.

だけど,たぶんこれ実際に話してる内容はもっと凄くて,文章に起こしたときに随分マイルド化されてるような気がする(笑,根拠ないけど).

「満足感」という言葉とともに製品の本質的価値とは少し外れたものを挙げている部分は,マイルドに言っているだけで要は,ユーザーは『馬鹿』(言葉が過ぎるのであれば,『騙されやすい』)と言っているに等しい.

そこら辺を,tokoroten氏がはてブコメントで

化学製品にUXの概念を持ち込んだから強いのかー

と評しているが,なるほど,それをUXだと表現すると分かりやすいですね(昔はUXって何だか分からない概念の筆頭みたいだったのに今は昔.あやっぱ結局分かったようで分からないけどw).

でも馬鹿だと思っていても馬鹿にはしてないよね.絶対に.

平均的な顧客やユーザーは賢い訳ではないという認識を持つ,と同時に,顧客やユーザーを決して馬鹿にしてはいけない.それが相反しないことだと組織に徹底させる.言うは易く行う(行わせる)は難し,てな感じなんだろうか.

よくよく考えてみたらAppleの視点もまさにそれ(馬鹿&¬馬鹿)のような気もする.

面白かった.

…………

当該記事,山ほどtumblrってしまった(笑).結果はこちら.

Happy Birhday to "Happy Birhday to You"

ニュース.

この記事だけで既に面白いんだけど,元記事の

を更に読むと,元々この訴訟はclass action (†1)であり,加えて,

The plaintiffs were represented by attorneys led by Mark Rifkin, who according to the settlement terms will be seeking a $4.62 million fee, a third of the $14 million settlement fund. The rest would go to those who have paid to license “Happy Birthday” and meet the definition of the proposed class. Those folks are estimated to have spent more than $50 million on licensing fees on “Happy Birthday” over the years.

とか書いてあって,アメリカいろいろと凄えなと思わずにいられない.

大雑把にいえば,

  • 和解金は1400万ドル(16億円)
  • 弁護士への報酬は462万ドル(5.3億円).成功報酬 33%
  • 残りの924万ドル(10.6億円)はこれまでライセンスフィーを支払っていた人々に分配する(†2)
  • なおこれまで支払われた(本来は不要であるのに請求していたということになった)ライセンスフィーの合計は5000万ドル(57.6億円)と見積もられている(和解金ではぜんぜん足りていない,つまりWarner/Chappellはなお,有効ではない著作権に基づく請求で儲けた状態のまま)

てな感じ?

なんかすごい.

ちなみにHappy Birhday to Youの著作権関連の話題については,Wikipediaの記載(ハッピーバースデートゥーユー – Wikipedia)でも十分に楽しめるかと.敗戦国の戦時加算とかも出てきます.

————

†1
「クラスアクション(Class Action)は、集団訴訟のうち、ある商品の被害者など共通の法的利害関係を有する地位(クラス)に属する者の一部が、クラスの他の構成員の事前の同意を得ることなく、そのクラス全体を代表して訴えを起こすことを許す訴訟形態である。原告は、自身以外のクラス全員の請求権の合計額を訴求できる。」(集団訴訟 – Wikipediaより引用)
†2
class actionなので訴訟自体に参加していなくてもそのクラスに合致していれば受け取ることができる.

循環する首に縄

ニュース.

  • 仏、大手スーパーに食品廃棄を禁止 寄付か転用義務付ける 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

    【5月22日 AFP】フランス議会は21日、大手スーパーマーケットに対し売れ残った食品の廃棄処分を事実上禁止する法案を全会一致で可決した。一法案をめぐって仏議会が一致団結することはまれ。

     新法の下では、大手スーパーは食品廃棄防止対策を義務付けられ、売れ残った食品のうちまだ食べられるものについては慈善団体に寄付するか、家畜の飼料や農業用の堆肥に転用しなければならない。また、大規模スーパーは全店が食品寄付を行っている慈善団体と契約を結ばなければならない。

例のごとく,フランスアゲ日本サゲの台詞が聞かれるが……

品質に起因すると疑われる事態が生じた際に,世間的・対マスコミ的・民事的・刑事的に免責されることが法的等に担保されるなら+ルートが確立されるなら(+多大なコストが生じないなら),別に日本だって好きこのんで捨てたい訳ではないだろ.

日本でドギーバッグが流行らない(店側からの)理由のひとつは,食べたら腹壊したとか捩じ込んでくる(そして振れ回り,そして責任追及の正義に酔う)タイプの言動に対して社会が脆弱だからだ.

皆で首に紐つけて引っ張り合ってるのに,紐からは手を離さず,隣の芝生を青いって言うのも,何だかなあ,とか思う.

まずはその紐から手を離せばいいのに.