相変わらず面白い.

こういった「多くの目玉による検証」と「逐次記録性」に晒される以上,マスメディアたりとて今までのような無謬主義のままでは到底持たない.では無謬性を一片も持たないものがメディアとして成立するかというとそれはどうなんだろう? という.(程度問題なのか?‥‥違う気もするし)

何のことかというと,朝日新聞の箱根山「噴火」の記事の件.

箱根山で火山灰確認 「噴火だが噴火の表現適切でない」:朝日新聞デジタル

当初はこんなだったらしい.

見出し:箱根山で火山灰確認 気象庁「噴火だが噴火と呼ばない
本文1:同庁は「……影響もあるので、噴火とは呼ばない」としている。 
本文2:……火山活動評価解析官は、今回の噴出現象について、「理科研究の小学生に、噴火かと問われれば噴火だと答える。ただ、気象庁では噴火と記録はしないと説明する」と話した。

既に上の記述は差し替えられて無くなっているが,当初掲載時の内容の断片を見つけることはできる.例えば「現象は噴火だが噴火とは呼ばない | Walk in the Spirit – 楽天ブログ」とか「朝日新聞東京報道編成局のTwitter投稿」とか.

そして以下の経緯を辿る.


『噴火だが噴火とは呼ばない』って何だそれ,隠蔽だ! 気象庁何考えてるんだ,等々のプチ炎上.

そもそも「噴火の記録基準」という気象庁の規定(噴火の記録基準について [PDF])があってだな,という冷静な解説が出る.

朝日新聞,記事を差し替える.

見出し:箱根山で火山灰確認 「噴火だが噴火の表現適切でない
本文1:同庁は「……影響もあるので、噴火との表現は適切でない」としている。
本文2:…………火山活動評価解析官は、今回の噴出現象について、「理科研究の小学生に、噴火かと問われれば噴火だと答える。ただ、気象庁では噴火と記録はしないと説明する」と話した。

見出しはともかく本文中の「」内,つまり取材対象者の発言内容まで変わっているのはどういうことかと.
本文2で言われていることは,内容を理解した上で読むと,極めて的確な表現だということが分かる.

一方で毎日新聞の記事を見てみると,そもそも表現が異なる.たぶんこちらは正確なんだろう.情報源というか取材機会は同じなんじゃないかと思うのだけど.

気象庁は21日、神奈川県の箱根山・大涌谷で同日午後0時1分ごろ、約10秒間にわたり、噴煙に火山灰が混じる現象を観測したと発表した。
灰が飛んだのは火口周辺の狭い範囲で、同庁は「ごく小規模な現象で噴火とは記録しない」と説明、……
箱根山:噴煙に火山灰が混じる現象「噴火とは記録しない」 – 毎日新聞

(多少の経験がある身としては)気象庁さまお気持ちお察し申しあげます,という感に堪えない.

関連まとめ:“噴火だが噴火とは呼ばない”改め、“噴火だが噴火の表現適切でない” – Togetterまとめ

分かりやすい説明はこちら:箱根山大涌谷で火山灰観測 「噴火とは言えないレベル」気象庁 | ハザードラボ

確かな情報を得るには,このような専門系で信頼に足るところを自分で見つけていくしかないのだろうか……でもそれって大変だよな……って本当はそこを埋めるのが“キュレーション”ではなかったのか(遠い目).