もう2ヶ月も前になっちゃったけど,村井さんの還暦パーティーに行ってきた.これです.
「未来のことはSFC生にバトンタッチ」 村井純学部長 還暦パーティーを潜入レポート! | SFC CLIP
村井さんらしく来客層が多彩で,普通であれば大先生であろう方々が所在なげにしていたりして,ちょっと面白かったです.
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私はWIDEの人では全くないし,村井さんと特段の付き合いがある訳ではまったくないのだけど,最初に会ったのはずいぶん昔だ.
村井さんと最初に会ったのは,米澤先生のお使いで村井さんの部屋にある,当時としてはたいへん貴重なレーザプリンタであったIMAGENにプリントアウトされた紙を取りにいったときだ.(ちなみにそのIMAGENのホスト名はpage.村井さんのマシンがclaptonで,あともう1台あった気がしたんだけど何だっけ? beckじゃなかったような気もするんだけど……)
いちばん最初はドアから入ったのか,それとも最初から“由緒正しく”窓から入った(ウィンドウプロトコル,だっけ?)のかは覚えていない.いずれにせよ窓から入ったときは,例のあの口調で「おまえ,この部屋への“正しい”入り方が分かってるな,えらいえらい」みたいなこと言われた覚えがある.
数えてみたらぴったし30年前.つまりは村井さんの還暦の半分のときだ.
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パーティーは壇上にソファーがあり,「さんまのまんま」方式でゲストがやって来てはお祝いの品を渡し,話をしていくという形式.例えばインプレスの井芹さんはプリントオンデマンド本をプレゼントとか,そういう感じである.司会が永井美奈子さんなので,結構それっぽい(笑).
そんな豪華ゲスト豪華なプレゼントが続くなか,個人的に一番印象的だったのは,日本科学未来館館長の毛利衛さんだった.
毛利さんのプレゼントは,白黒の玉が4つ.何かと思ったら毛利さん曰く,
プレゼントというより,正確にいうと,お返しするもの.これは未来館にあるインターネット物理モデルで使われている球です.
おー,よく見ると確かにあの球だ.白2つ黒2つ.2ビット分だね.
それに続く毛利さんの話も,とても印象的だった.正確には再現できないけど,だいたいこんな話.
- 村井さんにはとても感謝している
- インターネット物理モデルは,未来館の展示物で開館時からそのまま残っている唯一のもの(え?そうなの?と思ったけど館長が言うのだからそうなのだろう)
- 当時の小泉首相が未来館に来られて,インターネット物理モデルをみて「俺はこれでインターネットが分かった」と言ってくれた.そのとき未来館はこれで大丈夫だと思った
- いま中国が政策で国中に科学館を作っている.そこにはインターネット物理モデルをそのままパクったものが置かれている.最初は上海の科学館がパクった.中国の他の科学館がその上海のやつをまた真似て作る
- これは無許可でクレジットの表示もない.(村井さん曰く,ある日毛利さんから電話がかかってきて,いきなり「インターネット物理モデルを作ってもいいって言った?」って聞くから「いや」と答えたら「そう,分かった(ガチャ)」と言って電話を切られた,らしい(笑))
- それ以降,上海の科学館に何度も何度も何度も,しつこくしつこくしつこく言い続けて,とうとう上海の展示の脇に,これのオリジナルは日本の科学未来館にあってクレジットはJun Murai,という説明を中国語と英語で書かれたものが置かれるようになった
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上海にパクられたやつがあるって話は聞いた覚えがあったし,動画も見た覚えがあるんだけど,中国相手に交渉を重ねてクレジットを提示させたという話は知らなかった.
なんというか「毛利衛」力を,(また)しみじみと感じた瞬間だった.
パーティーから帰ってきてネットと戲れていたら,まさにその話をみつけたので,ついでに載っけておきます.該当部分をまるっと引用.この話の後に実際に置いたのを確認したってことなんでしょうね.
【毛利館長】
はい、たくさんある。現在、中国では、省に1つずつ大きな科学館をつくろうという国の政策があるが、その中で一番力を入れているのが北京の、来年オリンピックがあるから、そこで未来館の10倍ほどもある規模の科学館ができる。オリンピック時はプレスセンターとして使われるが、そこのアドバイザーで私が呼ばれて、いろいろとお手伝いさせてもらっている。その他にも、香港の北方にある広州にも14万平米の大きな科学館がこの11月に完成しうる。それから、上海も大きな科学館ができたが、油断するとそのまままねをされる。実際にまねされた。それは中国では当たり前な事なのである。しかし、例えば上海で村井先生のインターネット物理モデルというのがそっくりまねされたので、粘り強く、今から3年前、まねされてすぐから、上海の館長が来るたびにその対応について言ったりし交渉してきた。それは業者の責任だから館は関係ないと。そういう中国の今までの文化があるのだが、それをこの間、先々週のASPAC(アスパック)のときに館長が来たので、もう一度、初めからそういう話をした。どうしてまねしてはいけないのかというと、「それは未来館にとっては、研究者のプライドを最も尊重する文化で成り立っている。私たちの展示はすべて研究者のオリジナリティーがあって、あの展示は、村井先生がスミソニアンに対してさえだめだと言った展示が飾られているのである。」ということを申し上げた。最終的に、これは村井先生のオリジナリティーがあるということと、そのオリジナルなものが未来館にあるという説明書きをようやく、中国語と英語によってつけるというところまでいった。それを持って帰ったが、本当にそれをつけるかどうかというのは、まだわからないので、私たちは検査に行きますよと念を押した。中国あるいはアジアとつき合うときには、ロシアもそうだが、ただ単にアメリカやヨーロッパの外交ではなくて、人間と人間がぶつかり合うけれども、最後は信頼されるというところまで持っていく努力が必要なので、非常に難しいと感じた。
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【毛利館長】
実際には、本当にしつこく、しつこく、交渉を絶対にやめてはいけない。顔を合わせるたびごとにそういうことを言っていかないと、特に中国は難しいと思う。しかし、いったん信頼されると永く続く。そういう意味で、今は上海とはそこまでこぎ着けたが、次から次へと、今度は上海をまねしてどんどんつくっていくので、2次使用、3次使用になっていくので、そのたびごとにやるしかない。
—科学技術振興機構部会(第22回) 議事録:文部科学省
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という訳で,毛利さんが村井さんの還暦パーティーで「インターネット物理モデル」の話をした,ということが江渡さんに伝わってないということがこないだ判明したので(何となくそんな気がしてたんだ),2ヶ月遅れでこのような文章を書きました.話の中身自体は江渡さんが知ってることだけだろうけど,毛利さんが村井さんに気持ちを伝える材料としてインターネット物理モデルを使いました,ということは江渡さんには伝わるべきだと思ったので,僭越ながら.
ちなみにパーティーのその後では,「赤いちゃんちゃんこ」を頑なに拒否する村井さんへのプレゼントとして,Gibson ES-335のCherry Redが贈られました.ていうか自分で選んだそうだ(笑).
個人的にはですね,イエローじゃなく真っ赤な被覆の10BASE5ケーブルを特注で作って,それで,ぐるぐる巻きにしてさしあげる,というのがいいんじゃないかと思っていたのですが,そんなん今どき特注対応してくれるところがあるのかどうか知りませんごめんなさい(笑).
あと,そろそろ村井さんも打倒される側にまわるというか打倒する側出てこないと危ないのではないか,みたいなことを言ってたらた遠山さんに「そこら辺を脱構築してしまったのが村井さんではないかと」みたいに返されて,なるほど,と思いました.が,そこで納得させられていてはやっぱし駄目で,いでよ若者! みたいな,うん.
という訳で,村井さん,還暦おめでとうございます!