『シャク中』のシャク」


【注1】情報弱者

いろんな所で言ったり書いたりしてるけど、
僕はネットワークというものはamplifier (増幅器)だと思っている。
で、今の「インターネット・ブーム」の中で忘れられているのは、
amplifierっていうのは決して無から有を創り出す玉手箱ではなく、
既にあるものを増幅するだけのものなんだ、ということ。
そしてもうひとつ重要なのは、
このamplifierを持つ者と持たざる者との間の格差もまた、
増幅されてしまうということ。

ネットワークにおいても貧富の格差においても、
はるかに日本の先を行っているアメリカでは、
実際にこのことを認識し、
この問題に対して真剣に行動しているグループが既に存在する。
"Plugged In"という非営利団体がそれだ。

華やかなシリコンバレー一帯から小川一本隔てただけのEast Palo Alto.
数年前には人口一人当たりの殺人事件発生率が全米一だったという説もある
"Shadow of Silicon Valley".
この街に1992年に生まれたPlugged Inは、低所得者層の子供達に、
テクノロジーを通じて得られる様々な機会を提供することを目的としている。

Plugged Inでは個人/企業からの寄付とボランティアの人々の力で、
地域の幼稚園児から高校生にまで、
例えばドロゥイングツールを使ったお絵描きに始まり、
デジタルムービーの制作、プログラミング、
インターネットを通じたコミュニケーションなどの様々なカリキュラムを提供している。

(記憶が確かじゃないけど)確かこのPlugged Inを経験したEast Palo Alto
出身の高校生が努力の末スタンフォード大学に入学したという話もあるらしい。
いかにもアメリカ人が喜びそうな、美しい、美し過ぎる話だ。
しかしこの美談も、Plugged Inの存在も、
そしてこのPlugged Inのスポンサーに名を連ねる錚々たるシリコンバレーの企業群も、
紛れもないアメリカの現実であることだけは確かである。

M.M.