A Letter from Palo Alto

(94/4/10)

今どき情報に国境があるとは思ってないけど、たまたまこっちにいる人間の義務のようなものも感じるので知り得た限りのことを書きます。


Kurt Cobainは死んでしまいました。自殺です。

4月8日金曜日の朝8時40分頃、工事に来た電気修理工が屋根から窓を覗いた際、部屋の床に長い髪が横たわっていたのを発見しました。その後それが死体だと分かり、警察と地元のラジオ局に電話をしました。それが始まりです。

Kurtの自宅の敷地内にあるガレージの2階に作られたこの部屋で発見された死体は、その後指紋照合の結果、Kurt Cobain本人であることが確認されました。これが警察から公式発表されたのは12時過ぎのことです。

自殺した理由は未だに不明です。死因はショットガンで自分の頭を撃ち抜いたということです。

先月ヨーロッパツアーの最中、ローマでヘロインとアルコール(トランキライザーとアルコール、あるいは、睡眠薬とシャンパンとという説もある)の二重使用により昏睡状態に陥ったKurtは、回復後アメリカに戻り、ロサンジェルスにある麻薬中毒治療施設に入院していました。しかしその施設から抜け出して以来、6日間、彼の所在は不明になっていました。

Kurtの母親はその間、彼は自殺する可能性があるので早く彼の所在をつきとめるようにと周囲の人間に言っていたそうです。また以前にも、Kurtが自殺する恐れがあるため、Courtneyが彼を部屋に閉じ込めて外から鍵をかけるということがあったそうです。

Kurtが行方不明だった6日間、どこで何をしていたのかは未だに不明です。その間、この週の頭にはNirvana解散という噂が流れ、Lollapaloozaのヘッドライナーからも外れるという発表がされました。

警察の発表では、発見時には死後1日程度経ってたということです。

Courtney LoveはHoleのツアーでロサンジェルスにいましたが、公演をキャンセルしてシアトルに戻りました。彼女のコメントは一切出てません。

またKurtの母親は、"Now he's gone and joined that stupid club, I told him not to join that stupid club." と言ってます。"that stupid club" というのは要するに、数え上げればきりがない程いる早死した『ロック・スター』連中のことです。

遺体の横にあった遺書の内容は正式には発表されていませんが、第一発見者の電気修理工がテレビのインタビューで喋ったことによると、最後の2行には、

	I LOVE YOU.
	I LOVE YOU.
と書かれていたそうです。

また紙一枚全て "I LOVE YOU" で埋め尽くされていた(出来すぎだよぉそれは)という説もありますが、未確認情報だと思います。


こちらでも正式に報道されているのはこのくらいです。

ニュースとしての扱いはかなり大きいです。新聞も一面の記事ですし(細川さん止めちゃった、と同じくらい)、テレビのニュースでも2〜3番目の項目で取り上げられています。

MTVは臨時の2時間半の生番組を入れ、その中でUnpluggedを再放送してました。

新聞は、過去、いかに多くの『ロック・スター』がドラッグや事故やらで早死したかを書き並べ、そのリストにまた新たな一行が加わったと言ってます。

MTVや通常のテレビのニュースには、今年のRolling StoneでNirvanaのカバーストーリーを書いたライターやら、Nirvanaのノンフィクション本の著者やら、その他音楽評論家だのライターだのの有象無象が出てきては、Kurtについて、Nirnavaについて、『いかにして彼は"Alternative"とRockあるいはPopular Musicとの間の壁を破ったか』について、好き勝手なことを言っては帰っていきます。


銃があろうがなかろうが、麻薬漬けになってよーがなってまいが、死ぬ奴は死ぬし生きてる奴は生きてるし、それに、個人が抱える問題っつーのは、いかにその状況が似てても、その結果が似てても、全然違うものだろうし。(全く同じなら『歴史は繰り返』さない、のかな... ?)

変わらないのは、ステロな、って言うと最初から悪意があるようなので言い変えると、個々人の(ある意味では)無垢な反応の集合体が、結局のとこ、いかにうっとーしーものかっつーのと、♪At the record company meeting. On their hands a dead star ...♪ (で合ってる?)な状況というか。


結局Kurtが死んでも何も変わらないというか。死ぬことによって彼自身が「苦痛から脱却」できたかのどうかは誰にも分からないけど、メディアはますます跳梁跋扈するだけだというか。DGCも更に儲かるだろうというか。

残された人間は何をどーすればいいのか考えてみたけど、結局、何事もなかったかように、ただ普通にしているのが一番良いのかな、っていう気がします。

でもやっぱり、Kurtの死を特集した雑誌を買い、テレビを見て、半年後に発売されるレア・トラックやらライブCDやらを買ってしまうんだろうな、結局は。情けない。


今までそれほど自分がNirvanaのファンだとは思ってもなかった(い)し、実際、"In Utero" なんか買ってもないんだけど(今さら買えないよな...)、想像以上にショックを受けている自分にびっくりしてます。

こっちでもいまだにクラブでのライブを演ってたような奴らだから、きっとまたチッタで見れるだろうとか、思っていたのにというか。

思わず2年以上も前の(もう2年以上も前なんだ...)RNPの記事をほじくり返して読んでしまうというか。


In [rnp,05371] えびさん writes:
> にるばな@チッタすごかったっす。うう。
> あーゆーのはソニックユース以来だったっす。
> 50年代も60年代も70年代も80年代もみんなもういらないっす。
> ロックの過去をみんな投げ捨てて
> 直面するこの1990年代を走らんといかんのだろうかと
> 一瞬思ってしまったっす。
In [rnp,05380] わし writes:
> でも、あのまま走って行った先には何があるんだろーか。
> 走っていればいつかは転ぶけど、その転んだ先には、
> どんな未来が開けるのだろーか、などど考えてしまう今日この頃。
In [rnp,05392] 姉御 writes:
> ううむ。やつらはあのまま走って行くんだろーか。
>	...
> きっと転んだところでやっぱり転んだだけで、未来なんてなくて。
> それとも全然転ばないのかもしれない。
In [rnp,05457] わし writes:
> あのまま走って欲しいな。
> その先にはどんな未来があるのか、あるいは何もないのか、
> それが垣間見えたら僕にもお裾分けして欲しい。
> 自分で未来を開けない自分がどうしようもなく情け無いけどさ。
>	...
> やつらも結局この社会に消費されて、転ぶかどうかなんて、
> 誰も気に止めなくなってしまうのだろうか。

奴は走り続けてたんだろうか、転んでしまったんだろうか、未来は見えたんだろうか...


(from Post-Punk Mailing List, 1994/4/10)
<takadat@st.rim.or.jp>