proxyと著作権法第二十条第2項第三号および第四号

(1996/03/24)

つー訳で、今週は"IPSJ Multimedia Japan 96"なんぞに行ってた訳ですが、そこで聞いたものの中で、ある共通項を持っていたのが、

  1. 日立さんのWWW Quick View System (これは発表ではなくエキジビジョンにて)
  2. 梅村さんとこのAutoref
  3. 沖電気さんのW3-PENSEE
でした。これらはどれも(最後のW3-PENSEEは明示的に言ってはいなかったみたいだけど)、いわゆる「proxyに附加機能を入れる」って奴。

今やデータは山程あって、「仕組み」もそこそこのものがあって、これで本当にいろんなことが出来るようになって遊びがいがあるよな〜、というのは共通認識なのだろうけど、そこで突然現れるのが著作権の問題。

proxyにとある機能を入れてオリジナルのデータを改変して、すなわちたとえば、画像を縮小して(前出1)、各単語に辞書へのリンクを埋め込んで(前出2)、英語から日本語に翻訳して(前出3)、それをユーザに提示するとき、これが、著作権法第二十条の「同一性保持権」を犯していないのか、というかより正確には(?)、それが同第2項第三号および第四号の例外規定に該当するのか、である。その条文を引用すると次のようになる。

 (同一性保持権)
第二十条 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、そ
の意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない。
  (略)
 三 特定の電子計算機においては利用し得ないプログラムの著作物を当該電子計
算機において利用し得るようにするため、又はプログラムの著作物を電子計算機に
おいてより効果的に利用し得るようにするために必要な改変
 四 前三号に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に
照らしやむを得ないと認められる改変
# あ〜、partial includeしたい(意味明白)。

と、今までなら、この手をことを言った後は、「どーせ決めるのは裁判官だかんね、俺らの知ったこっちゃないかんね」とか言い放って終わりなのだが、最近、『カーマーカー特許とソフトウェア』(今野浩著,中公新書1278)という本を読んでいたら、

裁判官の仕事は、法律に照らしてコトの正否を判断することではなく、その「当否」を判断すること、つまり、その時の社会の構成員の大多数が納得できる妥当な結論をいかにして法律に矛盾せずに導くか、である。
(上144頁囲み記事より、onlineでないものは突然大雑把な要約になってしまう、しくしく) とか書いてあった。へー、そーなんだ、知らんかった。

という訳でone of 構成員になって考えてみよう…

あ、だみだ、「知らんかんね」が身についてて自分で考えられん。う〜む。(-_-;

この件に関しては思考停止しいるにもかかわらず、とりあえず、「私的利用のための変更、切除その他の改変」は認めてもらいたい今日この頃。そりから、「変更、切除その他の改変」のための『装置を提供すること』と、実際の『行為』は、絶対に切り分けて欲しい。

って、ほんとはこれは、「複製」でも同じことを言いたいんだぜー。著作権上の問題をハードウェア(を提供するかしないかの判断)に押しつけるのは止めちくりー、つーか。DATとかDV端子とか。んなもん、とりあえず棚上げすればいいのに。通信カラオケを見よ、っちゅうか。あれ規制してたら、多分、CDが簡単に100万枚売れる状況もなかったんだぜー、というのは猿の後知恵だろーか。

話が全然別方向へ行ってしまった、かな。

でも、「同一性保持権」の問題が未解決であることと、『装置』と『行為』の切り分けができないということは、W3-PENSEE(やその他の翻訳機能付ブラウザ)は販売できないってことにならないか? 考えをめぐらせすぎなのかっ、ちゅうか。

と、ところで、たうぜんながらこの問題は、日本国内な著作権法だけでは何も解決しないのである。何せ相手は、いんたーねっとだかんね〜、へへん、ちゅうか。あ〜。(-_-;


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