江渡さんのスライド

2011年3月11日、東日本大震災
  科学技術の敗北。ソーシャルメディアは大混乱
  科学技術が起こした事故→科学を否定する動きへ

と書いてあった.

当時,私も同じことを思っていた.たぶん皆思ってたんだろう.

原発事故に関してだけではなく,地震・津波の被害における土木工学系にも何らかの「敗北」があると思った.(科学技術の側から見て)他の分野の人々の多くが無力感を感じているようにみえた.

これで,これまで連綿と培われてきた日本人の科学技術に関する信頼は地に落ちるんだろうな,と思った.

ところがその後現れたのは「御用学者」という言葉だった.

「御用学者」という言葉が意味するのは,態度や精神に対する疑義であって,能力に対する批判ではない.誤った結論を導いた力量の無さを問うのではなく,金や権力に転んで嘘を言うお前らは汚いという批判.

当時その様子をとてもとても不思議な気持ちで眺めていた

「無能」だと批判するのではなく「御用」だと言い募る人々.

それらの人々は,結局のところ,そう安々と「科学技術」への信頼を捨てることができなかったのだろうか? あるいは,何が正しく何が間違いなのか/正しい答を導き出せるのかどうかも分からない状態では能力ではなく態度を批判するしかないのだろうか? それとも能力を問うより汚い奴だと言う方が「より痛烈な」批判だと考えているのだろうか?(でも科学技術者自身は能力を問われた方が本当は堪えるはずである) 何なんだろう?

そんなことを当時ぼんやりと考えていた.いまだに自分のなかで結論はでていない.