Switch(2013年10月号,Vol.31, No.10)に載ってる小泉今日子の文章が凄いというので試しに立ち読みしてみた.原宿百景「アキと春子と私の青春」.立ち読み読了後,これは敬意を表さざるを得ないということで,謹んで購入(福山雅治特集の売上としてカウントされるであろうことは若干釈然としないがw).

この文章の世界は,(小泉,能年)(過去,現在)(本人,役柄)の2x2x2のキューブで造られている.いやちょっと違うな.能年/アキの「過去(=80年代)」は(当然だが)存在せず,その代わりに能年/アキについては(現在,未来)の軸が設けられている.ともあれこの世界には,計8つのキューブが存在する.展開すると以下の8つだ.

80年代の小泉,80年代の春子,現在の小泉,現在の春子,
現在の能年,現在のアキ,未来の能年,未来のアキ

この文章には,これら8つのキューブが錯綜して現れるにもかかわらず,全ての文が,どのキューブに立って語られているか,語る視線の先にあるものやその語り口の対象はどのキューブなのか,が極めて明白であり,それが読み手にも混乱させることなく伝えられている(但し,あまちゃんの知識は前提である).

現れる主語は,私,あの頃の私,春子,私,その頃の私,私……

そして,その縫うような世界描写は,取りも直さず「あまちゃん」視聴者の視点とも交わり,読者の目頭を自然と熱くさせる.

何なんですかねこの文章は.小泉マジック恐るべし.

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Facebookへのポストからコピペしました(若干加筆あり).